【1/10】
むし歯を感染症と考えると失敗する② 生態学的プラーク説

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むし歯は過去、ミュータンス連鎖球菌が引き起こす感染症だと考えられていました。
しかし今では、ミュータンス連鎖球菌も常在菌であると考えます。
そして、むし歯との関係も絶対的ではないとされています。

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お口の中には、酸をつくる細菌、ガスを出す細菌、などなど全部で約1000種類。
数としても莫大な細菌が集団となってバランスをとりながら生息しています。
つまり、プラーク(歯垢)の中にも生態系があるわけです。

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イラスト

プラークのバランスや活動性が、いろいろな要素(食事のとり方、糖のとり方、歯磨きによる清掃状態、フッ化物使用方法、唾液量など)によって変化することで、むし歯のリスクが上がったり下がったりします。

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糖によってリスクが上がる場面を用いて、具体的な話をします。
①プラーク中の細菌が糖を代謝して酸を出すことで、プラーク中のpHが酸性に変化しかけますが、通常は唾液の働きやアルカリをつくる細菌の働きもあって、酸性状態は長くは続きません。

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②しかし頻繁に糖をとっていると、そのたびに作り出される酸によってプラーク全体が酸性になっていきます(環境の変化)。
③この酸性環境に適応し、酸に耐性のついた菌や、酸をつくる能力が高い細菌に変化するものが現れる反面、酸に弱い菌は生き残れません。

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④こうして、プラーク全体はさらに酸性になると同時に、酸性環境に強い細菌に入れ替わることになります(生態の変化)。
この中には代表的なむし歯菌であるミュータンス連鎖球菌が見られることが多いようですが、その点に着目しません。
そこに至る①~④のプロセスを問題ととらえ、コントロールしようと考えます。

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結論
むし歯を非伝染性疾患(人から人へと感染しない病気)ととらえ、日常生活における行動によって発生する疾患と考えます。
むし歯のリスクを下げるには行動の変化から!
これこそが治療と言えます。
一緒に頑張りましょう!

【9/10】
最後に
すると「感染の窓」の話はどうなるんだ?となりますね。
「1歳7か月から2歳7か月の間は、親から子どもへむし歯菌の感染が起こりやすいという話は?」という問題です。
これについてはまた、今度!

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地図